神戸酒心館(神戸市)が醸造する「福寿 純米吟醸」が、ノーベル賞公式行事で存在感を示している。2008年を皮切りに、日本人がノーベル賞を受賞した年に、これまで8回提供されたのだ。
2016年にニューヨークでの国連日本政府代表部主催による和食レセプションでも、乾杯酒として同製品が選ばれた。
熟した桜桃のような豊かな香りが特徴で、生クリームやカッテージチーズ(脱脂乳を原料にしたチーズ)などとの相性がよいという。
福寿の由来は
福寿は、七福神の子供や財産に恵まれ、健康で長生きできるとされる「福禄寿」に由来しており、もともとの社名は福壽酒造であった。
それが現在の神戸酒心館に変わったのは、阪神淡路大震災で酒蔵が全壊したのがきっかけだった。
3年近く経った1997年秋に新しい蔵で酒造りを再開した際に、酒造りの場である福寿蔵を中心に、ショップ(東明蔵)や飲食施設(水明蔵)、イベントホール(豊明蔵)を併設し、その際に社名も新しく神戸酒心館に変更した。
生酛造りや袋搾りを採用
同社では近代的な造り方の2倍の時間がかかる、創業当時からの製造方法である「生酛(きもと)づくり」を採用している。
さらに日本酒を搾る工程である上槽でも、大吟醸酒や純米大吟醸酒は、醪(もろみ)を酒袋に入れて吊るし、全く圧力を加えずに滴り落ちる酒だけを集める「袋搾り」を行っている。
手間と時間がかかるが、口当たりがまろやかで洗練された香味の酒を得ることができるという。