松岡醸造(埼玉県小川町)は、酵母の育成を促すカルシウムをはじめとするミネラル分が1リットル当たり149.6ミリグラム含まれる仕込み水を使用している。
この量は日本の酒造会社の中では最も多く、この豊富なミネラルによってコクのある味わいの日本酒に仕上がるという。
同社が酒蔵を構える小川町周辺には、地殻変動によって海が隆起してできた石灰岩からなる秩父連山がある。この山に降った雨は石灰岩でろ過され、数十年かけて地下を流れる伏流水となる。
同社ではこの水を地下130メートルから汲み上げて、仕込み水として使っている。どのような水なのかを知ってもらうために、誰でも自由に飲めるように、屋外に水飲み場を設置してある。
「社長の酒」というユニークな日本酒
同社の代表銘柄は帝松(みかどまつ)。「帝」は日本国の最高位を表し、「松」は繁栄のシンボルだ。「酒造りの頂点を末永く後世に維持していきたい」という想いから名付けられた。
そうした想いを込めて造られた商品の一つが「社長の酒」。もともとは清酒鑑評会出品用に少量を生産し、残った分を同社の社長が贈答用などに使っていたことから、この名が付いた。
敷地内にある庭園の中にはレストランもある。昔の蔵を改装したもので、庭に面したテラス席では、日本庭園を眺めながら酒、仕込み水、麹、酒粕などを使用した酒蔵ならではの料理を楽しめる。