日本酒は大陸から伝わったものではないことを証明した「日本酒の世界」

日本酒は大陸から入ってきた技術で造られたのか、それとも日本独自の技術で造られたのか。決着のついていないこの問題に筆者は二つの実験を基に、その答えに迫った。

一つの実験は、縄文後期か弥生初期の人たちが食べていた蒸米と、大陸などで食べられていた煮米と焼米を放置しカビの発生状態を調べた。その結果、蒸米にのみに日本酒で使われている麹カビが発生した。

二つ目の実験は麦の穂と稲の穂に付着しているカビを分離したところ、麦の穂からは大陸で多いクモノスカビの存在が確認され、稲の穂には非常に多くの麴カビの存在が確認された。

この二つの実験から、日本酒は「蒸した米を主食としていたわが民族による独創物であることを語ってくれているのではあるまいか」と結論づけた。

こうした独自の実験結果をはじめ、縄文時代や弥生時代の酒造り、平安時代の日本酒の飲み方、戦国時代や江戸時代の日本酒にかかわるできごとなどを、日本書紀や古事記をはじめとする豊富な史料をもとに紹介している。

著者は福島県の造り酒屋に生まれた発酵学者。「わが民族はこの神秘に満ちた国酒の過去と現在を教養の一つとして学び、文化遺産としての日本酒の知識を身に付けるべき」と結んでいる。

小泉武夫著、講談社刊

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