東京港醸造(東京都港区)は東京23区内唯一の酒蔵で、開業は2011年。当初は、どぶろく、リキュールの製造を行なっていたが、2016年に清酒製造免許を取得し、日本酒の生産を始めた。
東京港醸造は実は、突然生まれたのではない。ルーツがあり、その歴史は200年以上昔の江戸時代末期に東京・芝で酒造りを行っていた若松屋にさかのぼる。
7代目当主が酒造りを復活
若松屋は薩摩藩の御用商人で日本酒などを収めていた。その後、明治時代になり酒税法の変化などに伴いおよそ100年続いた酒造業を廃業した経緯がある。
こうした若松屋の歴史を踏まえて、7代目の当主が酒造りの復活を目指して製造免許を取得。当時と同じ芝で酒造りを始めたのが東京港醸造なのだ。
ブランドにも歴史が
同社の造る日本酒のブランド「江戸開城」には若松屋の歴史に由来がある。若松屋の奥座敷には海に通じる水路が伸びており、西郷隆盛や勝海舟らの江戸城の無血開城に関わりのある藩士たちが密談場として利用していたことから、この名が付けられた。
「純米大吟醸原酒 江戸開城 Gold」は、兵庫県産の山田錦を45%まで磨いて造った日本酒で、同社によると「香りが穏やかで、まとまりが感あり、コクと切れの良さが特徴の最高の一本」という。
東京港醸造の入り口脇には、軽自動車を改装したテイスティングカーが停められており、ここで東京港醸造の日本酒などを立ち飲みで楽しめる。つまみは近隣の飲食店からのテイクアウトや持ち込みも可能という。